松崎伶子ピアノリサイタル

気持ちのいい春の日が多くなりましたね。爽やかな日々の中、じっくりとピアノの調べをお楽しみください。

==松崎伶子ピアノリサイタル==

入場料は無料ですが、整理券が必要です。お問い合わせはチラシの電話番号にお願いします。

プロフィール

《 松﨑 伶子 人と音楽 〜 歌い、語り、息づくピアノ 》

松﨑伶子は1942年7月30日、愛媛県松山市に誕生、両親は音楽の教員で、父はアマチュアながら相当のピアニストであった。

1949年、一家をあげて上京し、小学校に上がった伶子はピアニストを志すことを宣言、以後父の厳しい指導を受ける。

当時のピアノ界の大御所永井進に師事していた父は、小学4年の時、伶子を師のもとにつれて行き、その場で才能を認められて、以後伶子は永井に師事、驚異的な成長を見せる。

1954年(小6) 第8回学生音楽コンクール小学生の部第1位、文部大臣賞。

1957年(中3) 第26回音楽コンクール(現日本音楽コンクール)一般の部第1位。

1959年、アンドール・フォルデシュ(ドイツザールブリュッケン音楽学校教授)のレッスンを受け、「帰国の際にドイツに連れて帰る」と言われるが、高校卒業を待つこととし、1961年に渡独、1964年ザールブリュッケン音楽学校マスタークラス修了。演奏生活を経て、1967年日本に帰国。

1971年、第12回ハンガリー国際音楽コンクール(リスト=バルトーク・ピアノコンクール)第1位。

これまで国内外でリサイタルおよび多くのオーケストラと共演し、英BBCをはじめ各国のメディアに出演、全日本学生音楽コンクール、日本音楽コンクールなどの審査員を務める。NHK教育テレビ「ピアノのおけいこ」専任講師、全日本ピアノ指導者協会(PTNA)理事を務め、洗足学園音楽大学ピアノ科教授、同名誉教授として多くの後進を育てた。

熊本には講習会、レッスン等でたびたび足を運び、そのファン、信奉者は多い。2012年に健軍文化ホールにてリサイタルを開催。

2012年以降、平成音楽大学音楽学科ピアノコース主任教授として指導にあたっている。

松﨑伶子の手にかかると、どんな簡単なフレーズも「生きて」くる。楽譜の中にしまわれていた音の生命が立ち上ってくる。松﨑伶子は楽譜を丹念に追いながら、それらを超えていくが、それは演奏という行為を新たな創造へと高めるものに他ならない。今、まさにここ熊本で、松﨑伶子と同じ時代を生き、そのピアノに触れることができる僥倖に感謝したい。

プログラム

《 プ ロ グ ラ ム 解 説 》

1 モーツァルト:ピアノソナタ 第11番 イ長調(トルコ行進曲付き)K.331(300i)

有名なトルコ行進曲を第3楽章に持つソナタである。1783年に、ザルツブルクまたはウィーンにおいて作曲されたと思われ、1784年にアルタリア社から出版された。1781年にウィーンに進出したモーツァルトが当時のウィーンの音楽愛好家の趣味を反映して作ったと思われる優美な曲で、ソナタとはいえ、冒頭のソナタ形式を欠く変則的な形式をとる。

第1楽章 Andante grazioso イ長調 6/8拍子  主題と6つの変奏

第2楽章 Menuetto イ長調 3/4拍子 トリオ付きのメヌエット

第3楽章 Alla Turca Allegretto イ短調 2/4拍子 複合3部形式(トルコ行進曲)

2   シューベルト:『3つのピアノ曲』 第2番 変ホ長調 D.946 Allegretto 6/8拍子

シューベルト最晩年のピアノ曲で、亡くなる半年前に作曲された。死後長らく忘れられていたが、ブラームスが匿名で編集し、『3つのピアノ曲』として40年後の1868年に出版した。この第2番はロンド形式で、繰り返すロンド主題は彼自身のオペラ『フィエラブラス』から取られている。穏やかな主題に続く第1エピソードはハ短調に転じ、さらに転調を重ねてロンド主題に回帰する。変イ短調で開始される第2エピソードはやや規模が大きく、最後はロンド主題で静かに締めくくられる。

3 リスト:『巡礼の年報 第2年 イタリア』より「ペトラルカのソネット第104番」ホ長調  4/4拍子 

リストは度々ヨーロッパの各地を訪れ、その地の印象を音楽に残した。それらは『巡礼の年報Années de Pèlerinage』というタイトルでまとめて出版され、『第2年 イタリア』は、1837年から39年にかけて訪れたイタリアでの絵画や文学などの印象を曲としてまとめたものである。ペトラルカはルネサンス期のイタリアを代表する詩人で、リストは彼のソネットから3篇を選んで作曲した。この第104番はその中でも最も情熱的な曲で、叶わぬ恋への焦燥が繊細かつ大胆なピアノ技法で表現されている。

4 ドビュッシー:『2つのアラベスク』より 第1番 ホ長調 Andantino con moto  4/4拍子

 ドビュッシー最初期のピアノ作品で、1888年頃作曲された。優れたピアニストであった彼は、その卓抜な和声感覚を随所に散りばめつつ、三連符と二連符が微妙に交錯する流麗な音楽を展開している。《アラベスク》とは「アラブ風」を意味し、アラビア風の植物文様のことを指す。上行と下行のアルペジオに編み込まれた「イ―嬰ト―嬰ヘ―ホ」のモティーフ、寄せては返す波を思わせる線的流動性が、その文様を思わせて興味深い。

5 ドビュッシー:『ベルガマスク組曲』より「月の光」 変ニ長調 Andante très expressif  9/8拍子 

1890年頃に作曲された『ベルガマスク組曲』の第3曲にあたり、その人気ゆえに単独で演奏されることも多い。極めて制限された強弱法と簡素なテクスチュアに依っているが、和音の推移の美しさは絶品である。ドビュッシーの弟子マルグリット・ロンは師のピアノについて「鍵盤の上を不思議な、染み通るような優しさで漂う一方で、驚くべき表現力があった。」と伝えており、この曲がドビュッシーのピアニズムの本質と深く関わっていることを示唆している。

6 フォーレ:「シシリエンヌ」ト短調 op.78 Andantino quasi allegretto  6/8拍子

 シシリエンヌとはイタリアのシチリア島に伝わる6/8拍子または12/8拍子の緩やかなテンポの舞曲である。フォーレは19世紀後半フランスの代表的作曲家で、この『シシリエンヌ』は当初はある劇の付随音楽として書かれ、後にチェロとピアノのために編曲されて有名になった。その後ピアノソロを含む様々な編成のために編曲されて、クラシックを越えた人気を博している。

7 ショパン:ノクターン 第2番 変ホ長調 op.9-2  Andante 12/8拍子

 ショパンのノクターン中、最も有名なものであり、伸びやかな旋律と美しい装飾に満ちた愛らしい曲である。この曲はショパンがパリについて間もない1830〜31年頃の作品で、オペラのアリアのように甘美でよく歌う右手と、広い範囲にわたる左手の繊細な和声が、若きショパンの天才を余すところなく伝えている。

8 ショパン:『4つのマズルカ』より 第2番 ニ長調 op.33-2  Vivace 3/4拍子

  ポーランドの民族舞曲であるマズルカとポロネーズを異郷にあったショパンが取り上げて芸術にまで高めたことはよく知られている。このop.33の第2番は1837年〜38年に作曲された素朴な民俗舞踊風のマズルカで、単純な主題が表情を変えて繰り返される快活な曲である。ABAの3部形式をとり、ファンタジーに富む中間部を経て、再び冒頭の主題に戻った後、短いコーダが美しく添えられる。

9 ショパン:バラード 第1番 ト短調 op.23

バラードは元来詩の形式であり、叙述的な「物語」を意味する。ショパンには4曲のバラードがあり、ポーランドの詩人ミツキェヴィチの詩に霊感を得て作曲されたと言われている。この曲は1831年から5年の歳月をかけて完成され、バラードの中でも特にドラマティックなことで知られる。曲はソナタ形式を下敷きとしており、レチタティーヴォ的な導入に続いて、6/4拍子の第1主題が現れ、アジタートの経過主題を経て、メノモッソで流麗な第2主題に流れ込む。それが存分に歌われた後、軽快なアニマートのきびきびした部分に移り、ピアニスティックで華麗な展開を見せる。再び第2主題および第1主題が現れた後、プレスト・コン・フォコでコーダに突入、圧倒的な力を持って全体が締めくくられる。